ドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州でフリーランスの芸術家への補償支払いが完了して8日が過ぎました。
日本語ではドイツに関して真偽いろんな情報が飛び交っているので、自分なりに調べたことをぼやきつつ綴ってみようと思います。
国で芸術家を援助するのは変?
3月半ばでしたが日本クラシック音楽事業協会や日本芸能実演家団体協議会が日本政府に公演の中止又は延期に伴って生じた損害への補償・補てん・救済策など、適切な対応を求める要望書を出しました。要望書を提出したという事実に対しては「へぇ~」くらいの感想しかありませんでしたが、書きこみは想像以上に心無いコメントばかりで、そっちにおったまげました。
どんなコメントがあったのかちょっと長くなりますが書きだしてみますのでご覧ください。
日本芸能実演家団体協議会の要望書提出についてのコメント
こんな感じでした。
「上から目線の図々しいえらそうな態度が演劇界の衰退の根本原因だと思う」
ん~、お願いしているのだから下からだと思うのですが・・・。
「この人たちは自分たちだけが困っていると思っているんですかね。半島の連中と同じ感覚ですな」
「俳優・演出家団体にも経済的支援をするなら全企業に支援を行わないと不公平」
「声の大きい人達だけを優遇すべきではない」
「普段から補償金もらってるだろう」
まぁ、いろんなところから悲鳴は聞こえているので、ここだけ支援するということにはならないとは思いますが、声も出さなければ伝わりませんからね。
「リアルなイソップ童話とアリとキリギリスの話みたい」
「なんでもかんでもコロナのせいにして甘ったれんな。税金払ってない夢追い人にびた一文払ういわれはないでしょ」
なかなか厳しいご意見ですね。税金を払っていないというのは偏見だと思いますが・・・・。
「別に強制されたわけじゃなくご自分たちで選んだお仕事ですよね」
「誰も頼んで演劇やってくれと言ってない。好きでやってんでしょ。」
世の中はそうやって成り立っているのではないでしょうか・・・。それに演劇等の舞台芸能に関わる仕事は舞台に立つ人だけではなく、たくさんあると思います。
「そういう職業なんです。支援求めるのは筋違い。」
「そういうことも含めて芸の道に進むものではないのか」
「大変なのはわかるがもともと不安定な職業」
「ある意味、AIで仕事を失う業種と同じで必要性の低い業種なのでしょう」
「エンタメは生活必需品ではなく趣向品であることを忘れてはいけない」
そうなんですね・・・。私は演劇の関係者ではありませんが、言い返せない、このもやもやはなんなのでしょうか。
「バイトでもなんでもして食つなぐしかないのでは」
「公演中止になったら時間もあるだろうからアルバイトでもすればいい」
「食品関連や福祉などは食いっぱぐれはないですよ」
そうですよね。そうなんですけどね・・・。
「ネット配信とかDVDブルーレイ化で稼げばいいのでは」
それはあまり現実的なご意見だとは思いませんねぇ。
「自粛要請に従った結果、と言い出すところが恐ろしい」
「自粛要請に対して自発的に協力しておいて補償しろはないと思います」
じゃあどうしたらよかったんでしょうか。
まぁ大体こんな感じです。こんな中にも心あるご意見もありました。
こちら☟
「多少でも所得につながれば所得税を納められるので、結果、国や都道府県市町村の財源確保につながりますよね」
「政府はこの業種を名指しで自粛要請していますからね。それなりの保証はするべき。学校や子育て世代だけ保証と言っているから反発が出る。これらの業種を必要ないものという人々がいるけど、それならあなたは娯楽ゼロでいきていけるのですか?と言いたい」
日本クラシック音楽協会の要望書提出についてのコメント
こんな感じでした。
「ただただあさましい」
「あの高貴なクラシック音楽のイメージとは全く正反対の、下劣で卑しい主張に唖然とします」
「この声明は残念、というよりアホかと思いました」
「クラシック関係者は元々金持ちの家が多いせいか音楽関係でも頭おかしいやつが多い」
な、なんと!凄い侮辱のされよう・・・!
「損害はあんたたちのところだけじゃない」
「ポピュラー音楽と違い採算が取れないから税金や自治体の補助金で補てんされるのが当たり前と考え方を改めましょう」
まぁ、そうですよね。みんな大変ですよね。
でも黙っていたら政府だって現状を把握できないと思います。
「こんな状況になって一番最初に『切られる』分野」
「普段から日本国へ金銭的にでも大きく貢献しているつもりか」
ひぇ~冷酷ですね!
「クラシック?聴いたこともないわ。」
そうですか・・・。まぁ、好きになる機会でもなければわざわざ聴かないかもしれませんね。
「なぜ一部の愛好家の為の物に国民の税金を使わないといけないのか」
ん?クラシック音楽を供給する側の話ですよ。仕事です。仕事。彼らも歴とした納税者です。
「コロナまん延に一役買っているのはこういう団体。こいつらが悪者。」
「自分らで入場者を把握し、何かあった際は責任とれるならやれると思う」
え?なんで、なんで??どうやって一役買うの?
演奏会でクラスター感染したりすると大変だし、責任なんてとれないと思うし、だから中止とか延期になっているのでは?
「ホールをいっぱいにできないアーティストまで全部入った場合と同額の保証を求めてきそうで怖い」
チケットの売れ高で出演料が決まるんですか?
例えば、日本の某放送オーケストラの演奏会がテレビで放送される時に「あら~お客さん入ってないなぁ」とか「今日は結構満席だなぁ」とかよく思っていますが、奏者の出演料がそれで変わるとは思えません。長期的な意味では変わってくるかもしれませんが、それには様々な要因があるでしょうし。
「仮にコロナがなかったとしてそれだけの収入が見込めたのかはなはだ疑問」
「これくらいで生活困窮するような芸術家は普段からそんなに稼げていない」
「水商売なんだから仕方がないよ」
まぁ、「10年に1回、ウィルスが流行って仕事ができませんよ。次は2020年頃です。」と事前にわかっていて今困難に陥っているならば自業自得かもしれませんが、今までは普通に生活できていたのでしょうから、そんな風に言わなくっても・・・と思ってしまいます。
「生活できないならやめるべき」
「音楽以外に能力がないのですか?就活でもしたらどうですか?」
音楽をお仕事にされてる方々って、これまでの人生、たくさん練習に費やしていらっしゃったんだと思うんです。例えば、突然お医者さんが働けない状況になった場合「勉強以外に能力がないのですか?就活でもしたらどうですか?建設業界は人手足りてないみたいですよ。」ってなるんですか?なるんでしょうねぇ・・・。
「こんな程度の連中の音楽なんて社会に不要なんだけどね。」
「音楽業界が死んでも困らない」
えぇぇぇぇ~~~っ!!!!なんかもう、いいのそんなんで?
「YouTubeで配信でも始めたらいいと思う」
「家にこもりっきりの親子向けに楽しい音楽をYouTubeで配信して新しい顧客層を広げるとか」
「関連業種の大手であるJASRACさんに頼られてはどうでしょう」
まぁねぇ。YouTubeでの配信の仕方を学ぶ機会にはなるかもしれませんね。
音楽家の方に家にこもりきりの親子向けに娯楽を提供を促していますが、じゃあ逆にコメ主さんが音楽家の方々の為に何かできないか~という考えには及ばない?
JASRACさんに頼るというのは何を意図されているのかがよく分かりません。楽曲利用にかかる著作権料の支払いへの補助か何かを国に要請してもらうとか???
「こういう時は普段できない事を試す・技術をブラッシュアップするなどの機会にすべきでは」
言われなくともされていると思いますよ。
「政府もまさか本気にしないでしょうね」
「他に使うべきところはある。こんなものに補てんしたら国が潰れる。」
「1円も補てんする必要なんてない」
う~ん・・・。そうかなぁ・・・。
刺々していないコメントはこちらの二つのみでした。
「文化活動はこういう時、軽んじられてしまう。こういう荒んだどきにこそ活かされると思うのだけど」
「文化を軽視するならばとても先進国だとは言えない。世界の笑いものになる。」
ドイツ政府が言うには
因みにドイツ政府は芸術文化について「この危機のもとでも芸術と芸術家たちの未来のために支援の努力をする。」
「芸術への補助金は重要な投資」
「一度失ったら、それを取り戻すのは難しい。」
なんてことを言っています。
ドイツは連邦制
※政治とか、歴史などのいわゆる社会の科目はあまり得意ではないので、「詳しい方からはご指摘を受ける部分もあるかもしれません」という前置きしておきます。ヨーロッパは、成り立ちが複雑な国が多いです。
現在私たちが「ドイツ」と呼んでいる国も、今の国土になったのは実はたったの30年程前なんですよ。
「元々は」と言うと、どこまで遡ればいいものか迷いますが、150年程前に統一されたドイツ帝国は22の王国、大公国などの君主国と3つの自由都市から成る連邦国でした。
その名残なのか、現在も連邦制を採用していて、16ある州でいろいろと違いがあります。
基本的な法律に違いはないようですが、例えば州により学校の休暇(夏休み)の日程が違ったり、公立の大学でも費用が違ったりします。
国民の休日ですら州ごとに違いがあり、全国統一されていません。
教員免許を持っていても取得・勉強した州が違うと教員として働くことができない州もあるようです。
こんな風に、日本国内の感覚とはちょっと違うところがあります。
既に支払いが済んだとは
日本は新型コロナウイルスの影響での国民への援助を一律10万円とか世帯で30万とか、いろいろ言っていましたが、申請制で10万円というのでとりあえず落ち着いたんですかね。先述の通り、州によりばらつきがあるドイツですが、国としてはいち早くフリーランスの芸術家への援助を宣言しました。
その中でもノルトライン=ヴェストファーレン州は4月9日、フリーランスの芸術家への補償の支払いが行われました(他の州でも「事業主」への支払いは既にあっていたようですが)。
ドイツでもフリーランスの芸術家への直接の金銭援助には賛否両論あるようですが、ここノルトライン=ヴェストファーレン州では17000以上の申請があり、一人最高2000ユーロ(約22万円)が支払われました。
資産の有無に関わらず返金の必要はありません。
迅速に対応が出来るようオンラインで申請が受け付けられていましたが、悪い人達はこの機会を見逃しませんでした。
巧妙な偽の申請サイトが作られ、偽物だとは気がつかずにそこで申請をしてしまった人や会社の情報はそのままで、振込先のみ変更されて本物の申請がされていたとのこと。
詐欺ですよ!
犯人はドイツ国外のようですが告訴?告発?はされているようです。
銀行振り込みなんだから足がつくでしょう???と思うのですが。
詳しい被害はまだ分からないようですが、3500~4000の企業や個人情報が流出し、金額としては最高で2ケタの100万ユーロの範囲(っていくら?1000万ユーロってことかな?)だそう。
巧妙でないものを含めドイツ国内では現在100以上の新型コロナウイルス関係の偽サイトが特定されているそうです。
こんな事件があったので、この州では一時オンライン申請の受付が中止になっていましたが、今日から再開されたもよう。
日本も気をつけましょうね。
ノルトライン=ヴェストファーレン州とは
ノルトライン=ヴェストファーレン州はドイツの左真ん中くらいにある州で、人口がドイツで一番多い州です。ドイツで一番多く日本人が住んでいるデュッセルドルフ、大聖堂があるケルン、サッカーで有名なドルトムントなどは日本でもなじみがある街だと思います。
東西分断時代の西ドイツの首都ボンも、ここノルトライン=ヴェストファーレン州にあります。
あ、あと忘れてはならないのはルール工業地帯ですね。
ちょっと長くなったので、ドイツの他の州での対応についてページを分けたいと思います。
続きはこちら☞ 日本が税金で芸術文化を援助するのは変ですか その2
その2では、ドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州以外の州での補償や、日本人がなぜドイツ人より幸福を感じられないのかなど考察し書きました。
その2、続きです☟
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